フラットライナーズ (2017)

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2017年オータムシーズンの酷評No.1(予定)の「フラットライナーズ (2017)」です。オータムシーズンどころかオブザイヤーも狙える! 私はスリラー/ホラーの境界のような映画が好きで、本作も予告を見てたいへん楽しみにしており、いそいそ見てきたのですが、開巻30分時点くらいで臨死でした。

でもだからといって実際どのくらいつまらないの!?興味ある!!となるほどアレでもなくて、ほんとなんの変哲もなくクオリティが低いだけのホラー映画なので、熱の入ったレビューもできなくてなんかすまない。でも「フラットライナーズ (2017)」がこの世に生きた証をのこしたほうがいいかと思って反省会的に書いた。あとブログ始めて気づいたんですけど私にはなにかがダメだった映画について書きたいという強い意志がある。

*ちなみに1990年版未見です。

 

反省①ぬるい

序盤、登場人物の医学生たちを紹介する冒頭10分間なんかは、このまま病院ドラマが始まってもいいほどふつう。ホラー映画としての予兆?不吉感?気味悪さ?みたいなものはない。”フラットライニング”に説得力を持たせる、死後の世界に魅かれてしまう雰囲気もない。はちゃめちゃにぬるい。人肌のお湯くらい。

1990年版は通しでは未見なんですけど断片なシーンは知ってて、キーファー・サザーランドの「It's a good day to die!」で始まるあのカマシ感とか、ああいう雰囲気づくりは一切ないです。未見なのに印象で言うんですけどフラットライナーズからカマシと雰囲気を引いたらなにが残るのか。というかだいたいの映画から雰囲気を引いたらたいへんなことになる。たいへんなことになった。

反省②ださい

早くもただの悪口みたいになり申し訳ないんだけどだってラブシーンで「ちゃら~ん」みたいな音楽かかるしホラーシーンでは「どーん!」みたいな音する。素直だな。もっとひねくれて。あと画面の色味もデジカメみたいだから調整して。

反省③みんな軽々しくフラットラインする

「悪くすると死ぬかも」「障害が残るかも」「バレたら輝かしいキャリアが台無しかも」というのを台詞では一応言ってるけど、だれもそんなに深刻に考えてるとは思えない軽さ。特に2人目なんですけど、1人目の蘇生がけっこう大変で、わりとあぶなかったにもかかわらず「次は自分がやる!」ってなるのどうかしているのかと思った。あのノリでいくなら1人目の蘇生は完璧ばっちり!ほら簡単で安全でしょ?ってなってないとおかしいのでは。でもそんなことより目先のスリリングさを優先したんだろうな。

反省④だれも死後の世界に興味があるわけではない

フラットライナーズから死後の世界への興味を引いたらなにが残るのか。言い出しっぺのエレン・ペイジですらべつにほんとに死後の世界に興味があるわけではないし(後述)、他の人は臨死体験すると頭がよくなるみたい!というのでフラットラインしていくわけで。サプリとかを飲むくらいの感覚で臨死。

反省⑤後半はなんの変哲もないホラー

ほんとにふつうのホラーだった。つけてないラジオが鳴る、急に人が現れる、電気が消えるなどなど。こんなにホラーホラーしたものを久しぶりに見た。

反省⑥回収が雑

ホラー要素はつまり自分の過去への罪悪感が見せる幻であって、それを清算しなきゃいけないというのはオリジナル版からそうだったはずなんですけど、清算の仕方が雑ー。そもそも罪悪感が見せる幻を単なるホラー描写にしたのひどくない? 被害者のはずの人々が単にバケモノになってるよ。過去に主人公たちにいじめられたりひどいことされたあげく、勝手に妄想でバケモノにされて、しかも現実では急に押しかけられて「許してほしい!許してくれないと私/俺が困る!」っていうのされる被害者側さいあくすぎるぞ。

反省⑦オリジナルからの設定改変がうまくいってなさそう

主人公(エレン・ペイジ)に関する改変はぜんぜんうまくいってないとおもう。死後の世界を暴こう!→自分でさえ忘れていた過去が…ていうほうがシンプルでよくない? 開巻5分でわかるからアレなんだけど、エレン・ペイジは最初から自分が事故で殺した妹に会いたくてフラットラインしたのに、実際に会えたら怖がってるだけなの意味がわからなくない?(A.ホラー演出だから)

あともっと詳しく言うと、キーファー・サザーランド=エレン・ペイジではなく、オリジナル版のサザーランドが持っていた要素は複数の人に分割されてると思うんだけど、それも誰が主人公なのかよくわからん感じに貢献しただけだったと思う。

さらにオリジナル版では白人男性が黒人女性をいじめてた過去があったけど、今回は黒人女性がアジア系女性をいじめてた設定。だれもが自分より立場の弱い者をっていうことなんだろうけど、全体的にぬるいのになんでその設定改変だけビビッドにグロいの?(A.グロさをたぶん認識していないから)

 

 

ここは反省しなくていい!①ディエゴ・ルナ

と反省ポイントを書き連ねてきたけど「ディエゴ・ルナがかっこよかった」という一点において「フラットライナーズ (2017)」を許すという選択肢もわれわれには残されているかと思います。反省しなくていい。もっとやって。

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まわりが20代半ばの学生という設定の中、ちょっと浮いてるディエゴ・ルナ(というかエレン・ペイジもジェームス・ノートンもぴかぴか医学生には見えないけど、ディエゴ・ルナはさすがに前職があるという説明が入った)。ちょっとお兄さんなので終始みんなを諫める役のディエゴ。医者としてもいちばん優秀なディエゴ。序盤、頭はいいがちょっとアスホールなところがある設定だったものの、一瞬で忘れられて中盤以降ただの正義感の強いいいひとになっていたディエゴ。ディエゴにはホラーパートはないので、それも含めてまるで引率の先生みたいな存在感。ホラーパートがないなら何してるの?というとラブシーンはあります。アイドルか。

 

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↑こういうディエゴ・ルナは本編で見られません。ずっとかっこいい顔をしている。 

 

反省しなくていいポイントは①でおわりです。

 

雰囲気のないクオリティ低めホラーということで歴史の波にのまれていくと思われる「フラットライナーズ (2017)」ですが、ディエゴ・ルナのために目撃者になる選択肢はある。もしかしたら2017年にイケていたのはこういうメン!という意味で歴史的価値が出てくるかもしれない。